2017年1月7日土曜日

寄稿文『旧世紀エヴァンゲリオン FAKE GENESIS EVANGELION 鋼鉄の宴』第八章前半

第八章前半




 大日本帝国海軍に所属する航空母艦「赤城」と「葛城」の飛行甲板には、上空から所属が識別しやすいように、デカデカと日の丸描かれている。それが望月の光に照らされている様は、
「まるで、血の赤だな」
 防空駆逐艦「冬月」の司令塔から僚船を眺めた加持リョウジはそう呟いた。
「そろそろお別れだよ、リッちゃん。そして……葛城」
「どうしても、やるつもりなのね。」
 加持リョウジの言葉に応えたのは、空母「葛城」上に立っている女性だった。年の頃は三十前後、スラリとした体型で、黒髪を長く伸ばし、ベージュの外套を羽織っている。
「夕方の特攻で戦艦二隻を大破させたが、まだ無傷のアイオワ級が二隻も残ってる。随伴艦を引き離さなければ、大和・日向だけでは心許ない。」
「そういう意味じゃ無いわよ。私達と違って、貴方はここに来ないという選択肢を持っていた。なのに、なんで唯々諾々とここまでやって来ちゃったわけ?」
「唯々諾々としてたわけじゃ無いさ。ただ、どんなに悪あがきをした所で、運命って奴が相手じゃ、どうしようも無い。」
「ふーん、あきらめちゃうんだ。「運命」ってレッテルを貼って。」
「仕方ないだろう、もう俺たちは子供には戻れないんだから。それに、逃げようとしても逃げ切れないなら、正面から突っ込んでいくほうが、まだ、俺の性に合ってる。」
「その「性」自体が、あなたの無意識の中に、あらかじめ植え付けられたものだとしても?」
 そう言ったのは、先程から、空母「赤城」の甲板上に立って、話を聞いていた女性である。白衣を纏った研究者風の出で立ちをしている。年の頃は今加持と話している女性と同じくらいか。金髪だが、顔立ちは明らかに日本人のそれである為、恐らく染めているのであろう。やや派手な化粧と対照的な右目の下にある泣きぼくろが印象的だ。すっと会話に入り込んできたところをみると、二人とは旧知の関係なのだろう。
 加持リョウジは空母「赤城」へ視線を移すと、彼女の問いに直接は答えず、こう言った。
「その質問の答えは、リッちゃんが一番、よく知ってるんじゃないのかい。」
 答えは、無かった。
「さてと、それじゃあ、さよならだ。出来ることなら、次はもう少しまともな世界で会おうな。」
 加持は会話を打ち切ると、名残惜しそうに視線を二人から引き離し、艦首方向へと向けた。
「さてと、それじゃ、一緒に行きましょう。副司令。」

0 件のコメント:

コメントを投稿