寄稿文『旧世紀エヴァンゲリオン FAKE GENESIS EVANGELION 鋼鉄の宴』第九章後半

 第九章後半

　日本海軍水上艦艇の夜間肉薄雷撃により、国連軍太平洋艦隊の総旗艦「イリノイ」には魚雷八本が命中した。優れたダメージ・コントロールにより轟沈こそ免れたものの、艦首切断及び大量の浸水により「イリノイ」は戦闘能力を完全に喪失し、緩やかに沈没への道を辿っていった。
　一方、攻撃が「イリノイ」に集中した結果、僚艦の「ケンタッキー」は左舷に魚雷一本を受けるにとどまった。自慢の速力こそ二十ノット強に低下したものの、なおも戦闘能力を維持したアイオワ級戦艦「イリノイ」。それに対するは、連合艦隊旗艦「大和」、そして航空戦艦「日向」の二隻である。

敵艦ノ砲撃　「大和」ノ左前方　一二〇〇米ヲ航行スル　航空戦艦「日向」ニ集中セリ
ソモソモ「日向」ノ主砲ハ三十六糎砲八門、速力ハ二十五「ノット」、装甲モ対三十六糎砲防御ニスギズ　新鋭戦艦トノ正面キッテノ砲撃戦ハ、無謀ナリ
シカレドモ、戦艦同士ニヨル戦闘ノ際、数ノ優位ガ勝敗ヲ左右スル例、ハナハダ多シ　第二次欧州大戦ニ於ケル「ビスマルク」追撃戦ナド、ソノ最タルモノナリ
シカモ「大和」ノ第一砲塔、現在使用不能ナリ　「大和」一隻ノミデハ、勝利ノ確信ハ得ラレズ　
「敷波」、「蒼龍」、「赤城」、「葛城」ニ続キ、今マタ「日向」、「大和」ヲ守ルタメ、アエテ難敵ニ相対ス
我、カケル言葉ヲ知ラズ
　
敵艦ノ夜間砲撃、極メテ正確ナリ　相次イデ日向ノ至近ニアガル水柱　「大和」ニモ恐怖ヲアタフ
今回ノゴトキ「反航戦」ニオイテハ、目標トノ距離ハ急速ニ接近　互イノ砲撃ノ威力、及ビ命中率モ、一斉射毎ニ増大ス
砲戦ガ長引ケバ、「大和」ノ重装甲トイエドモ、貫カルル恐レアリ　
我ガ方ノ電測射撃ニモ、必死ノ念、自然ト生ズ 

敵艦ノ第五斉射、遂ニ「日向」ヲ捕ラウ　
艦橋ニ主砲弾ガ命中　衝撃ニヨリ中央付近カラヘシ折レル艦橋ノサマ　サナガラ鉄ノ大木ガ切リ倒サレルガゴトシ

続ク第六斉射、第三砲塔付近ニ徹甲弾ガ着弾、暫シノ後、日向爆発ス
恐ラクハ主砲弾薬庫ノ誘爆ナルベシ
　 
「日向」轟沈シテ巨体四散ス
幾重モノ僥倖ニ恵マレ生キテ海面ヘト落チシ少数ノ者、必至ニ泳ギテ救助ニ望ミヲタクス
其処ニ襲ヒカカル大波、我ラ「大和」ノオコシタル航跡ナリ
「大和」ニ対スル彼ラノ胸中、果シテ如何

 参考文献（副読本）

『戦艦大和ノ最期』 　　　　 吉田満  (著)   講談社文芸文庫