2017年6月29日木曜日

飽きたら終わりだ!アイカツ!感想。第4話「Oh!My!Fan!」

 「Listen!ハニー達!カメラ目線はアイドルの初歩の初歩!動くカメラに自慢のポーズをキメてやれ!」
 ジョニー先生がいつものジャージ姿で、センテンスごとにポーズをキメながら生徒に激を飛ばす。
 動くカメラは、スターライト学園の特訓備品の一つだ。三輪の台座から二つの関節を持つアームで繋がれたカメラが、プログラム制御され縦横高低自在に動き回る。標準的な指導要領としては4台が用いられ、それぞれが順々に撮影ポジションに着くと自動的にシャッターが切られる。このカメラはアイドルの準備を待たない。アイドルがカメラのタイミングに自分の準備を合わせるのだ。さらに実力が向上すると、台数を増やすか、複数台が同時にシャッターを切るようになる。カメラ目線とポージングをマスターしたならば、次はより素早いポージングや、隙のない横顔をマスターする必要がある。
 この特訓にも食らいついてゆくあおい、これまた翻弄される一方のいちご。
 「微笑むのはカメラに向かってじゃない!カメラの向こう側にだ!」
 「む、向こう側……?」
 ジョニー先生の激も、まだまだいちごにはしっくりこない。


  アイカツは毎日の特訓の積み重ねだ。オーディションを勝ち抜くには、それ相応の実力を身に着けなければならない。それは漫然と授業を受けているだけで得られるようなものではない。衣装のセンスと同様に、実力もまたセルフプロデュースなのだ。

 あおいと二人一組で、たこ焼き屋のキャンペーンキャラクターオーディションを受けることにしたいちごは、足腰の錬成のために学外での朝ランニングを始めた。前回のライブオーディション(第2話:臨時マネージャー)であおいと同時にステージに上がりながらも、ダンス中に転倒したいちごは合格できなかった。二人一組となれば、あおいの足をひっぱるわけにはいかない。
 「アイ、カツ、アイ、カツ……」歩調は自分で取る。
 2キロ走り、4キロ走り。だんだん息が上がってきた。一人で歩調を取っているから、呼吸のリズムを取るのが難しい。なんだか脚も痛いし、苦しいし、それになにより……だんだん、寂しくなってきた。





 
 そんなとき、いちごは自分のファンだという同い年くらいの男の子・太田駆と出会う。彼は美月の臨時マネージャーを選ぶオーディションの動画で、転んでもすぐに立ち直りがんばったいちごの姿に感動したという。彼はずっと陸上を続けていたが、際立った才能もなく、目立った成績も残せていない。さらにはスランプに陥ってしまって、今はもう陸上を辞めようかと思っているほどだという。
 しかし、そんなときにいちごの動画を見て、自分も何かがんばりたい、走りたいと思って、今日はこの公園でランニングをしていた。
 初めて「ファン」と言ってくれる人に出会ったいちごは大興奮で、明日も一緒に走ろうと約束をする。


 翌朝、「いちごのファン」に興味を持ったあおいも参加して、三人での朝ランニングが始まる。
 太田のペースに合わせるといういちごに、彼は「俺は一応陸上やってるけど、君たちは……」と気遣う。しかしいちごも負けじと「私たちだってアイカツしてるよ!」と宣言。結局太田のペースで走ることにする。
 しばらく走るうちに、さすがに息が切れてくるいちごだが、そこで美月パレスのレッスンルームでみた美月のことを思い出す。神崎美月は、苦しいからって音を上げたりしない。倒れ込むまでダンスの練習を続けていた。
 それに、いちごはあおいと約束をした。トップアイドルになるために、どんな厳しい特訓もやり抜くと。このランニングも必要なアイカツに違いない。

 力を振り絞って腕を振り、無理やり足をついてこさせる。気付かぬ間に、いちごは太田を追い抜いていた。そのアイドル根性に触発された彼もまた、ペースを上げていちごを抜き返す。そしてまたいちごが加速し、あおいは二人に着いていくために速度を上げる。

 いちごとあおいのまぶたの裏には、あの夜の神崎美月の姿が浮かび、視線を上げて走る太田の目には、いつか走ったトラックの白線。陸上競技場のあの歓声までも聞こえてくる気さえした。
 太田はいつしか、陸上の楽しさを思い出していた。陸上部のみんなと走った、ひとりじゃなかったあの日を。
 三人はそのまま走り続け、いちごとあおいが芝生に倒れ込むまで競り合った。

~~~

 それから数日、いちごとあおいは一緒に朝のランニングをしてオーディションに備えた。太田はまた寮へ戻り、陸上部の仲間と練習を続けている。偶然にも、たこ焼き屋のキャンペーンキャラクターオーディションと、太田の陸上部の地区大会予選は同日だった。
 順番を待つ楽屋で、いちごとあおいは「カメラの向こう側」の意味について話し合った。カメラの向こう側には、太田のようなファン一人ひとりがいて、自分たちはその人たちに、気持ちを伝えないといけないのだと。
 そして二人は、カメラの向こうまでたこ焼きのおいしさを届けるような、最高のパフォーマンスを披露し、見事キャンペーンキャラクターとして選ばれた。
 数日後、太田からいちごに地区予選突破の報告が届く。
 
 「こうやって、誰かの応援で私たちが頑張れて、その私たちが誰かに元気をあげられる。アイドルっていいね!」

 いちごとあおいは笑いあった。
 「あ、でも太田くんはいちごの初めてのファンじゃないよ。いちごのファン一号は私だから!」
 「そうなの!?」

*****

【今日の謎特訓】



  冒頭に書いた設定は非公式です。
 


【今日の美しき刃】

いちご、あおいの部屋から漏れる音に気づき耳をそばだてる
  たまたま二人の部屋の前を通りかかった紫吹蘭。スピーカーで課題曲を流しながらダンスを合わせる様子に聞き耳を立てる。

そして「息は合ってる。でも……」と意味深なことを心の中でつぶやき立ち去る。

(さて、ここで紫吹蘭は「でも……」のあと何を考えたのか。第5話と合わせて考えれば、これはおそらく、「まだまだ自分本位なパフォーマンスだ」という旨のことだと思われる。この第4話は「カメラの向こう側」とファンがテーマで、アイドルはそういう人たちに向けたパフォーマンスをしなければ、という話だし、第5話のテーマは……また次の記事でちゃんと触れよう)

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